ricca okano

ここには確かホテルがあった 今はもう窪んだ土があるだけ その水が硬く凍り 底にあるのは 過去の思い出 [旅するお墓] 岡野里香

廃墟の並ぶこの土地が好きだ 崩れて自然に還っていく そのままに放置された 繁栄の残り香 私は 狼のように 彷徨う [旅するお墓] 岡野里香

凍る前の水面を 温める 冬の光 ぬくもりを 私も いただく [旅するお墓] 岡野里香

昔むかしの 父と母が出会った頃の写真を ツリーに飾り 祭壇のような クリスマスを迎える [旅するお墓] 岡野里香

雪はなくても 川の水は冷たく わずかに残る 水草は 深い深い緑になって 揺れる [旅するお墓] 岡野里香

薄い雪も溶けて 午後3時のピクニック シュトレンと台湾茶と冬の光 僕の上に置くと まるでお供え物 それもいいかな 観えない誰かよ 出ておいで [旅するお墓] 岡野里香

雪が降る前の森は遊び場 倒れた木の上に 並んでみたり ただ　僕は 空を見上げたかっただけさ [旅するお墓] 岡野里香

森の中の道は どこに続くとも知れない。 小雪の降る中を 木馬について行こうか。 [旅するお墓] 岡野里香

夜の森は 数え切れない 動物達が 眼を開く そして お墓も 夜は得意 [旅するお墓] 岡野里香

姥百合を知ってますか 花は数日で終わり あとは大量の種を作り 冬の雪原に殻となった姿で残る こんなにもたくさんの種を 生きた証を 私は残せるだろうか [旅するお墓]

散乱した衣類 これ ほんとにトランクに入るかな チェックアウトの時間は迫るけど 廃墟のような部屋が好きで 手を止めてしまう [旅するお墓] 岡野里香

ボタンをかけて きちんとたたんだ 洗濯物 同じように たまには きっちり並んでみようか [旅するお墓]

薪割りの途中 小春日和に ちょっとブレイクタイム 一宿一飯の恩義って 「シェーン」で教えられた また過去に戻りすぎた [旅するお墓] 岡野里香の新しいシリーズ[旅するお墓] お墓＝私という想定のもと 愛して止まない故人と自分の象徴としてのお墓（陶のオブジェ）と旅に出る。 現在　過去　未来　時間と空間を自由に行き来するお墓達。 お墓とこんな事をしたいな〜という妄想をインスタレーションと写真で 皆さまにお伝えします。